研究概要 |
前立腺成長因子の物理化学的性質については、その分子量、等電点、熱不安定性、細胞内局在を明らかにし、既知の成長因子とは異なる成長因子であることを European Urology(12:41-48,1986)に発表した。前立腺成長因子活性に及ぼす性ホルモンの影響として、androgen,estrogenがPGF活性を増強することを第73回日本泌尿器科学会総会、第44回日本癌学会総会で報告した。 前立腺組織別の前立腺成長因子(PGF)含量は、前立腺肥大症に最も多く、正常前立腺の約4.3倍の活性が認められ、前立腺癌においても正常の約2.2倍のPGF活性が認められた。PGFは分子量約80K,43K,10K等電点PI6.0,4.3,4.0,熱不安定性の酸性タンパク質でありエステラーゼ活性を有せず既知の成長因子とは異なる成長因子である。 PGFは前立腺癌細胞の増殖を最大210±40%促進させたが、その促進効果は、正常線維芽細胞(360±30%)よりも低かった。 正常線維芽細胞においてandrogenは約170%estrogenは約90%のPGF活性の増強作用を示した。しかし前立腺癌細胞(PC-3)ではandrogen,estrogenのPGF活性増強作用は認められなかった。
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