研究概要 |
昭和60年10月より40〜65才までの女性を対象に中高年女性外来を開設した。特殊カルテにもとずき中高年女性に特有な疾病の有無及びその社会的、医学的背景の追跡を行って来た。当科特殊外来を受診した婦人全般では、これまでも報告のあった様々な症状が見られたが、閉経後婦人に限ってみると、神経質,いらいら,不眠などの精神神経症状、及び冷感症,不感症など性的な症状が増加していた。不定愁訴を主訴とする患者にはMMPI(ミネソタ多面的人格目録)を行ない精神科疾患、特に鬱病の混入を見い出している。また、血圧,検尿,血算,生化学的検査を施行しているが、これらの検査で肝疾患,腎疾患などの他科疾患の除外が可能であった。一方、全症例に対し、Microdenstometry(MD)法にて骨粗鬆症の有無を診断してきたが、特に閉経後や去勢後にはその発生頻度が、45.6%,30.4%と閉経前婦人の18.2%に比べ著明に増加していることが明きらかとなった。また、これら骨粗鬆症の発生を内分泌学的に検討してみると骨粗鬆症の程度と血中エストロゲン、アンドロステンジオン濃度との間に有意の逆相関が見られ、これら2つのホルモンが骨粗鬆症の発生に重要な役割を果たしていることが示唆された。また、MD法の各Indexのうち骨密度を示すGSminは最も鋭敏に骨度化の推移を反映することも明きらかとなった。このようにMD法は閉経後骨粗鬆症の診断に簡単で有力な方法であることが判明したが、その基準値は閉経などの卵巣機能の状態を無視して作られたものなので、現在我々は卵巣機能を考慮した新しいスタンダードを作成している。骨粗鬆症の対策として、結合型エストロゲン、水溶性エストロゲン,ビタミンDを投与してその治療効果、予防効果を集積中である。エストロゲン投与に対しては、子宮内膜癌発生など、その副作用の予防、早期発見に留意しているが、今までのところ子宮内膜癌その他重篤な副作用は見られていない。
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