研究概要 |
本研究の当初計画に基づき次の如き成績が得られた. 1.扁平上皮癌組織よりTA-4亜分画を精製し, モノクローナル抗体を作製したが, その中では酸性TA-4に反応性の強いMab-317, 中性TA-4との反応性の強いMab-21, あるいはいずれの亜分画とも同程度に反応するMab-13やMab-27が注目された. 2.TA-4亜分画のうちのmainの亜分画の一つ(SCC抗原)につきアミノ酸組成が明らかにされた. 更にパルスラベル実験やレクチン・アフィニティー・クロマトグラフィーの成績よりTA-4亜分画の中には糖を含有しているものがあることが示された. 3.Mab-21とMab-317を用いてTA-4亜分画の局在を検討した. Mab-21で染色される中性TA-4は正常扁平上皮の中層細胞あるいは扁平上皮癌細胞に広く検出されたが, Mab-317で染色される酸性TA-4活性は腫瘍組織の中でも特に正常組織に近い周辺部分で増加しているとの興味ある結果が得られた. 4.モノクローナル抗体を用いた新しいRIA法が確立された. この測定系は二種類のモノクローナル抗体を用いたサンドイッチ法で, 測定感度も従来法の1.5ng/mlから0.1ng/mlへと大きく改善された. 5.扁平上皮癌患者の頚管分泌液中の総TA-4活性(あるいは酸性/中性TA-4比)は対照例の値より高値を示す例が多かったが, 良性疾患あるいは妊婦でも高値を示す例もあり, その臨床応用については更に検討が必要と考えられた. また唾液中にも極めて高濃度のTA-4活性が認められ, TA-4測定に際して十分な注意が必要と考えられる.
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