研究概要 |
ステロイド系薬物の抗腫瘍効果発現機構について子宮内膜癌にたいするプロゲストーゲン療法を中心に研究をすすめた. 高分子型腺癌はホルモン療法に反応しやすいが, 低分子型腺癌では反応しにくいことや, 高分子型のものにプロゲステロンレセプターの存在率の高いことも知られている. 我々もこれを確かめたがPRの認められないものでも抗腫瘍効果のみられるものがあった. そこで, この効果がホルモン効果によるものかそれとは別の薬物効果によるものかを知るため, まず癌細胞に正常内膜細胞にみられるようなホルモン反応性が残されているのかどうかを調べてみた. その結果, 正常内膜ペルオキシダーゼはエストロゲンにより誘導されるが癌ではこのような誘導が認められないこと, また正常内膜ではプロゲストーゲンによりestradiol-17β dehydrogenaseが誘導されるが癌ではこの効果がきわめて弱くなるなど, 癌組織ではホルモンに対する反応性の低下が認められた. 他方human tumor clonogenic assayで内膜癌細胞の各種ステロイドに対する感受性をしらべてみるとこの細胞は全般的に黄体ホルモン剤に反応するが, 黄体ホルモン活性と抗癌作用の強さは平行せず, 例えば黄体ホルモン剤であるmedroxyprogesterone acetateやmegestrol acetateは高い濃度で抗癌効果を示すが, おなじ黄体ホルモン活性の強いchlormadione acetateやnorethindroneでは高濃度でも抗癌効果がみられないことが明らかになった. すなわち抗癌作用はいわゆるhigh affinity, low capacityのプロゲステロンレセプターを介するものではなく, low affinity, high capacityのレセプターを介して生ずることが明らかになった.
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