研究概要 |
1.聴器の正常発生 マウスを使った外耳・中耳の正常発生を組織学的に観察, 中耳については主要構造物の発生時期を明確にした. 特にアブミ骨低の発生由来については詳細に観察し低部の一部がotic capsuleをとりこんで形成されること, また外耳については鼓膜形成が生後10日から11日目に行われることを明らかにした. 2.実験動物を使った催奇形実験と薬剤による催奇形抑制効果 まずラットを使って, 妊娠10日目にビタミンAを体重kgあたり20万単位腹腔内注射した群, セファランチン10mgのみを注射した群, ビタミンAとセファランチンを同時に注射したもので, 生存胎仔での外表奇形発現率は, それぞれ98.2%, 1.8%, 41.8%であった. さらにこれらについて, 骨・軟骨染色法によって中耳領域の奇形病態をみると, ビタミンA単独投与群とセファランチン併用投与群では, キヌタ骨奇形が100%と59.7%, アブミ骨奇形17.4%と8.1%, また茎状突起の異常が100%と67.7%と, セファランチン併用群では奇形発現率は少ない傾向がみられた. これは本剤の細胞膜安定作用によると思われた. また, マウスを使って, 同様な方法で実験を行い, セファランチンの併用によって, キヌタ骨, アブミ骨, 茎状突起では奇形発現率が減少する傾向がみられた. 3.実験動物聴器の器官培養法および全胚培養法を用いた発生学的観察 マウスの妊娠10日目胎仔の第1から第2鰓弓領域を耳胞を含めて切除し, これをBGJb培地を使って4日から10日間, 器官培養し, 90耳中31耳で内耳への発生分化を, 20耳で中耳へのそれが観察された. また, 2次的増殖分化しかみられない器官培養に対し, 立体的発生過程が観察できる全胚培養が本研究にはより合目的的であるため, ラット11.5日目胎仔について回転培養を試み, 24時間培養に成功した.
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