研究概要 |
ヒト細胞色素上皮細胞(以下RPEと略す)の純粋培養法を確立し, この培養細胞を用いて以下の研究を行った. 1)形態 光学顕微鏡的には, 増殖に伴ない色素顆粒は減少, 細胞の線維芽細胞様変化がみられた. 電顕所見では細胞内小器官は十分に豊富に認められ, ミトコンドリアは細胞上面に多く存在し, 細胞極性の変化を予想させた. microvilliは培養細胞では不要のためかほとんど認められない. 貧喰能実験では, ラテックス粒子と, ヒト網膜視細胞外節とを分離したものを用い, 電顕による観察を行った. その結果, ラテックス粒子, ヒト外節とも, まず手のような形のmicrovilliで包みこまれ, 太くなったmicrovilliで狭みこまれるようにして, RPE内に押し込まれてゆく. また, ヒト外節にて一部切離してとり込んでおり, sheddingを思わせる所見も得られた. 細胞内器官では, microfilamentが細胞内でとり込んだラテックス細粒などに集中して付着しており, 開いた粗面小胞体が多数みとめられた. 細胞骨格に関しては, サポニン処理を行って観察した結果, 60-130nmにわたる口径をもつstress fileerが認められ, 貧喰時にはmicrofilamentに相当する口径25-30nmの線維が絡みつくように観察された. 完全にとり込まれるとstress fiberの間隙に空洞がみられ, これはライソゾームなどの集合を予想させた. ライソゾーム活性は, 4種類のライソゾーム酵素につき, アゾ色素法にて酵素組織学的に検索し, 培養RPEに全て確認された. コラーゲン産生に関しては, 長期間培養されたRPEの基底分布に細い線維からなる網状組織を認め, これを免疫組織化学的に検索したところ, I, IV型コラーゲンが検出され, ELISA法では, IV, V型が確認された. 以上, ヒト網膜色素上皮細胞の培養法を確立し, その形態学的観察, 貧喰能, 細胞骨格, ライソゾーム活性, コラーゲン産生能などを検索し, 又, RPEの株が確立されたことは本研究による大きな成果である.
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