研究概要 |
1.眼底を赤外線テレビジョンで観察する装置を作成した。これは、可児らによって考案された眼底視野計、稲富,可児らのファンダスハプロスコープを更に発展させたもので、両眼の眼底を赤外線テレビジョンで観察し、コンピュータによって制御される視標を自由に動かしたり変更したりすることができるようにしたものである。また、背景,視標の輝度を広い範囲にわたって無段階に正確にコントロールするために、ウェッジフィルタとシャッタをステッピングモータで制御し、被検者の応答に従って自動的に輝度,露出時間を設定し実験を行うことができるようにした。さらに、瞳孔の大きさと運動を記録できるような装置を取りつけた。この装置により、視覚,眼球運動,瞳孔運動を厳密な条件で計測することができた。 2.視覚系には、X,Y,Wの3種類のシステムが知られている。本装置を用いて、ヒトの受容野特性の実験を行った。(1)パルス状の光刺激によって得られる応答の受容野は、サルなどの実験で得られているYシステムの特性と一致していた。これは、ガウス曲線の形の興奮野と抑制野によってシミュレーションが可能であった。(2)ランプ刺激によって得られる応答の受容野は、Xシステムの特性と一致していた。(3)瞳孔運動の閾値から計算される受容野は、これらと異ったものであった。今後の検討課題である。 3.両眼の対応する網膜部位に対して光刺激を行い、閾値を測定した。閾値付近の刺激により他眼の促進効果がみられたが、抑制はみられなかった。 4.単眼および両眼に光刺激を与えて、跳躍眼球運動の潜時を測定した。閾値付近の刺激において、潜時は、優位眼の刺激の方が非優位眼の刺激の時より短かく、両眼の刺激ではさらに短かかった。
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