研究概要 |
三叉神経感覚核である脊髄路核は、形態学的特徴に基づいて3つの亜核に分類され、特に、細胞構築構造からみて、閂を境にして吻側の2亜核には層構造がなく、尾側の亜核には明確な層構造が見出されることを大きな特徴としている。しかし、最近の、ニューロンの上位中枢への投射様式、また一次求心性神経線維の終止様式の研究により層構造が見出されることが示唆されるようになった(林,1980,1981,1984)。そこで本研究は、ニューロンの受容野の詳細な解析とセロトニン線維の分布を調べることにより層構造の検索をすることを目的とした。 その結果、(1)LTMニューロンの体性局在は背内側から腹外側へ第【III】,【II】,【I】枝の順に明確な配列をしていた。また、顔面吻尾側方向の受容野については、吻側亜核では、吻側から尾側への受容野をもつニューロンは核の芯側から脊髄路側へと配列し、尾側亜核では逆に脊髄路側から芯側へと配列していた。但し、この配列は明確ではなかった。口腔内に受容野をもつニューロンは中間亜核の顔面吻側部ニューロン深部に隣接して位置していた。LTMニューロンのなかで潜時と高頻度刺激に対する追従性により2次ニューロンである可能性の高いニューロンは、吻側の亜核では核の脊髄路側半分に分布し、閂付近では核全体に数多く分布し、また尾側亜核尾側部では散在していた。(3)セロトニン免疫反応線維は、尾側亜核では【I】,【II】層に多くみられ、【V】層にもみられた。しかしながら閂付近で【I】,【II】層構造が消失するとともに消失し、代わって三叉神経旁核に数多く見出された。 以上の結果は、(1)吻側亜核は形態学的に層構造がないが機能的には存在し、かつ尾側亜核【III】/【IV】層とは異なること。(2)尾側亜核【III】/【IV】層は脊髄後角【III】/【IV】層と全く同質ではないこと。(3)三叉神経旁核は、【I】層の延長とみなすことができることを示唆する。
|