研究概要 |
本研究は, 4つの段階に分けて進められた. その第一は, ネコ大脳皮質の第一次体性感覚野から, 咬筋神経の電気刺激に応答する皮質ニューロン(MD neuron)活動を記録し, その性質を調べる. 第二は, 顎顔面口腔領域の運動野を皮質内微小刺激(ICMS)により検索し, 咬筋感覚入力と運動出力系との関係を調べる. 第三は, 顎の受動的下制に応答する皮質ニューロン(JD neuron)活動を記録し, 咬筋の自然刺激に対するJD neuronの応答を調べる. 第四は, 顎運動に大きな役割を果たしている顎関節感覚入力を受ける皮質ニューロン(TMJD neuron)活動を記録し, その性質を調べる. MD neuronは第一次体性感覚野の冠状回後方部(後方投射野)と中央部から前方部に至る領域(前方投射野)に分かれて分布していた. 後方投射野のMD neuronは3b野に, 前方投射野においては3a野, 6aβ野にそれぞれ存在していた. また, これら両領域からはJD neuron活動が記録された. 後方投射野に分布するJD neuronは, 下顎下制に対し, phasicな応答を示すもの(phasic type)が多いのに対し, 前方投射野のものは, Bursticな応答を示すもの(Burst type)が多かった. また, Burst type JD neuronは, ほとんどが咬筋筋紡錘からの入力を受けていた. さらに, これら両領域からはTMJD neuron活動も記録された. ICMSによる結果から, 後方投射野のICMSでは, 顎顔面口腔領域に運動は引き起こされないが, 前方投射野のICMSでは, 運動が引き起こされた. この結果, 前方投射野に分布する様々なニューロンは, 顎顔面口腔領域の運動制御に関係した働きを有することが示唆された. これに対し, 後方投射野のニューロンは, 咬筋感覚や顎関節感覚の認知に関係した働きを有する可能性が示唆された.
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