研究概要 |
表記研究を行って得た結果は, 以下のように要約できる. A.歯髄微小循環調節 歯髄循環系自体は, 他の循環系と同様にノルエピネフリン, アセチルコリン, ブラジキニン, サブスタンスP, プロスタグランジンあるいは腸管由来血管作動性ペプチド(VIP)が歯髄内に存在すれば, 薬理学的特異的受容体を介してこれらの物質に十分反応する. 特にブラジキニンは, B_2-キニン受容体を介するプロスタグランジンの遊離により, その作用を発現する. また, 形態的に歯髄周辺組織の潅流圧に影響を受けやすいため, 盗血現象により, 隣接組織血流量変化にともなって, 受動的に反応する. この結論は, 歯髄循環系の病態生理を解明するうえで有益な基本概念となろう. B.エンドトキシンと微小循環系および摘出血管 エンドトキシンは, 直接, 口腔内微小循環系の破錠をもたらす作用をもち, 歯周病発症の有力なメディエーターであることが明確となった. C.ブラジキニンと摘出舌動脈の反応 ブラジキニンは, 摘出舌動脈を収縮させたが, 肺動脈, 腸間膜動脈および総頚動脈を弛緩させた. ブラジキニンの摘出舌動脈収縮作用は, α-受容体作動性Ca^<2+>チャンネル, およびプロスタグランジン生合成系を介する作用ではなく, 主として, B_2-キニン受容体作動性Ca^<2+>チャンネルとNa^+-Ca^<2+>交換機構の活性化を介した細胞へのCa^<2+>流入増大によるものである. また, ブラジキニン受容体は, エンドトキシンによって誘導される可能性がある. 本研究で明らかにしたように, ブラジキニンが口腔内循環系に広範に, そして積極的に関与していることは, 種々の口腔内疾患の病態生理とその治療の確立のための重要な点である.
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