研究概要 |
エナメル質の小柱構造形成の機構を解明するために, ブタ幼若エナメル質を脱灰して得られるタンパク成分からSephadex G-100カラムを用いてゲル濾過を行い, 小柱鞘を構成している会合性の強いタンパク画分を分離し, この画分に含まれているタンパクをさらに分画, 精製し, その性質を調べた. 分画, 精製は, Sephadex G-50によるゲル濾過, TSK gel Octadecyl 4PWおよびTSK gel ODS-120Tを用いたHPLCで行った. 小柱鞘を構成しているタンパクの会合物には, 幼若エナメル質中の主成分である分子量約22,000のamelogeninも含まれているが, 会合性の強い成分は, 分子量数千のいくつかのポリペプチドであることが判明した. SDS-RAGE像でほぼ単一なものとして5つのポリペプチドが得られたが, アミノ酸組成およびN-末端から20番目までのアミノ酸配列を調べた結果グリシン, チロシンを多く含むポリペプチドは, amelogeninのN-末端側に由来するものであり, セリン・グルタミン酸を多く含むポリペプチドはamelogenin以外のタンパクに由来するものであることが判明した. 新たに見出されたポリペプチドのN-末端から20番目までのアミノ酸配列は, Met-Leu-Ser-Gln-Tyr-Ser-Arg-Phe-Gly-Pne-Gly-Lys-Ser-Phe-Asn-Ser-Leu-Met-Ser-Serである. また, エナメルタンパクの会合状態を検討するために分画, 精製した種々の画分の分子量を光散乱法を用いて測定したが, 全般的に期待値よりも大きな値が得られることが多かった. しかし, その原因を究明することがエナメルタンパクの性質をさらに明らかにすると考えている.
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