研究概要 |
歯周病原性細菌の構築成分が線維芽細胞の代謝生理に対してどのように作用するかの研究を行なうために次のステップの研究計画をもった。 1.各種歯周病原性細菌の全菌体および構築成分の調製 2.ヒト歯周組織の線維芽細胞の調製,増殖および保存 3.細菌構築成分に対する線維芽細胞の代謝生理 1と2は主として60年度の研究課題として、61年度は3の課題に集中した。 〈知見〉 各種病型の歯周炎罹患歯肉から調製した線維芽細胞(成人性歯周炎,3株;重度進行性歯周炎,2株;若年性歯周炎,1株)および正常歯肉に由来する線維芽細胞に対するBacteroides ginawalis(Bg)およびActinobacillus actinomycetemcomitans(Aa)の全菌体抽出物の作用を、1.細胞形態の変化,2.細胞付着能,および3.DNA合成能の面から調べ、次の結果を得た。 1.細胞形態の変化:若年性歯周炎由来細胞はAa抽出物によって、重度進行性歯周炎由来細胞の1株はBg抽出物によって著明な形態変化を受けた。 2.細胞付着能:若年性歯周炎由来細胞はAa抽出物によって強く細胞付着能が阻害された。 3.DNA合成能:線維芽細胞はすべて、細菌抽出物によって、濃度依存性にDNA合成が抑えられた。若年性歯周炎由来細胞と重度進行性歯周炎由来細胞の1株は、Aa抽出物によってとりわけ著明にDNA合成が抑えられた。 〈研究成果ならびに今後の展開〉 歯肉線維芽細胞はドナーの病能によって、代謝生理が異なると考えられる。また、若年性歯周炎由来細胞はAa抽出物によって、各種代謝機能が抑えられることも示唆された。線維芽細胞のドナーを増やして、歯周病の病型別に調べる系統的研究に発展させたい。
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