研究概要 |
歯肉剥離掻爬手術後の新付着様式に関する興味ある検索テーマの1つとして, 根面に集積する細胞phenotypeに関するものがある. しかし, 新付着にどのような細胞phenotypeが関与するのかはよく知られていない. 本研究は, 歯肉剥離掻爬手術後の新付着に関する細胞側の応対を解明する目的で, 歯肉結合組織部由来細胞, 歯根膜部由来細胞および歯槽骨骨再生部由来細胞の形態的, 機能的ならびに根面との付着様式の差異について検索した. 実験動物としては, ニホンザル成猿を用いた. 術前処置として, あらかじめプラークコントロールを徹底させた後, 上顎小臼歯部に歯肉剥離掻爬手術を行ない, 10日後, 術部の各部位(歯肉結合組織部, 歯根膜部および歯槽骨骨再生部)から組織片を採取し, 培養系(in vitro)ヘ応用, 初代培養を行なった. 得られた各培養細胞(継代3〜5代)は, 染色体チェックの後, 超微形態, 増殖速度, 倍加時間および飽和密度を観察, 次いで各培養細胞と根象牙質面との付着様式を比較検討した. その結果, 超微構造に関しては, 3種の培養細胞とも多くの面で所見は共通しているものの, 骨由来細胞が細胞間にcell jurctionや多量の未熟な〓〓crofibrilを形成し, 多少, 他の細胞と様相を異にしていた. 機能的には, 増殖速度および倍加時間に関して, 骨由来細胞が他の細胞より優れていた. 各種培養細胞と根象牙質面との付着様式は, 培養7日目までは, 各細胞間に際立った差異は観察されなかったものの, 骨由来細胞においてのみ, 根面に対して積極的な付着傾向を示す所見が得られた.
|