研究概要 |
チタンは軽量で耐食性, 機械的性質に優れ, しかも人体に対する安全性がきわめて高いことが知られている. しかし, 歯科へ応用するには純チタンでは融点が高すぎる上, 高温で酸化しやすく, 埋没材と反応しやすいこと, 鋳造性が悪いなど難点が多い. 本研究はチタンへの合金元素の添加を試み, 歯科精密鋳造用として最適なチタン組成を見出すこと, およびチタン合金の鋳造に最適な新しい鋳造機を開発することの2つの方向からチタンの精密鋳造についても検討することを目的とした. 1.チタン合金の研究 固容量が大きく, 融点を下げる可能性が大きいと考えられる準安定β型の合金元素を添加し, まず2元素合金で機械的性質から歯科鋳造用合金として最適な合金系を検討した. この結果, Ti-20Cr合金, およびTi-25Pd系合金が高い強度と延性を示し, しかも融点が低く, 歯科鋳造用に適していることが見出された. さらに, Ti-20Cr合金に0.2%シリコンを添加すれば鋳造との反応や鋳造性が改良されることがわかった. またTi-25Pd合金では5%のクロム添加が同様の理由で効果的であった. これらの合金の鋳造精度や表面あらさは歯科用のNi-Cr合金やCo-Cr合金より良好であった. 2.チタンD1合金用遠心鋳造機の研究 チタン合金の鋳造機として(1)鋳造溶解室は10^<-2>mmHg以上にできること(2)鋳造は鋳造性が良く安定な遠心鋳造法とすること(3)鋳造は1回5分以内に終了すること(4)あまり高価でないことなどを目標に開発した. 開発したものは溶解るつぼと鋳型を円柱状の小型容器に入れ, この容器自体を回転させ, 遠心力で鋳造するものである. 溶解方法はアルゴンアークとし, ルツボには溶解チタンと反応しないカルシアを用いた. この鋳造機は上述の目的をほぼ満足するものであった.
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