研究概要 |
前年度にひきつづき、顎口腔領域に生ずる結合組織の増殖を主体とする疾患のコラーゲンの還元性架橋結合ならびに型分析を行い、正常歯肉および正常顎骨と比較検討を行った。今年度は特に顎口腔領域に生じた間葉系腫瘍におけるコラーゲンの性状ならびに動態を明らかにする目的で、同様の生化学的研究方法を用い分析した。尚、分析にあたり、ミリポア,アミコン,グラディエントミキサー,カラム架台装置,スラブゲル泳動装置を購入し、不溶性コラーゲン画分を得るための試料調整時間の短縮、ならびに分離精製能の向上により、明瞭な分析結果が得られた。 間葉系腫瘍では悪性線維性組織球腫と顆粒細胞の分析結果から、正常組織や反応性増殖物に比べ腫瘍細胞の増殖にともないコラーゲンの代謝活性が高いことが示され、特に悪性腫瘍で高い傾向がみられた。また、悪性線維性組織球腫のコラーゲン型分析では、幼若な組織に多いといわれている【III】型コラーゲンの増加と【V】型コラーゲンの増加を認めた。骨肉腫や肺癌などの悪性腫瘍では【V】型コラーゲンが増えるとの報告もあり、悪性腫瘍におけるコラーゲンの代謝の特徴および腫瘍の増殖能との関連性については今後検討すべき点と思われた。 これまで間葉系の疾患の病態成立のメカニズムならびに病態の推移を明らかにする目的で、結合組織の主要な成分であるコラーゲンの性状ならびに動態について研究してきたが、当教室のウサギ抜歯創の治癒過程における生化学的研究で、骨修復機転に関連し非コラーゲン性蛋白質の興味ある動態が観察されており、コラーゲンの代謝にかかわりうることが推測される。この意味で現在、非コラーゲン性蛋白質として、プロテオグリカン,リン蛋白質,オステオネリチン,フィブロネクチンを含めた検討を実験動物を用いて行っている。
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