研究概要 |
試験管内で増殖性の肥満細胞を大量にかつ恒常的に供給することが出来れば、作用機構が明白な抗アレルギー剤の効果的な開発に繋がると考えられ、培養肥満細胞の作製と維持、特に増殖と機能活性に関する詳細な検討を行った。まず、培養肥満細胞として成熟した結合組織型肥満細胞の一種、腹腔性肥満細胞の長期培養条件を検討した。腹腔性肥満細胞は単独細胞では培地に加えた牛胎仔血清成分と反応して短時間に脱顆粒を起こし破砕するが、基層培養として、ラット胎仔肝組織,あるいは胎仔皮膚組織の培養を行った後、腹腔性肥満細胞を培養すると、顆粒やヒスタミンをよく保有した培養把満細胞が得られる。しかし、一部もしくは基層培養細胞由来と思われる神経細胞様の樹状突起を有した細胞に変異するが、この変異細胞は顆粒(メタクロマジー陽性)やヒスタミンを含有することから肥満細胞と考えられる。また、IL-3依存性の増殖性肥満細胞株(P-3)を、WHEI細胞の馴化培地を用いて維持した。癌化肥満細胞は、増殖活性は高いが機能活性が低いので、酪酸とグルココルチコイドにより機能を活性化して使用する。酪酸の場合は、顆粒形成を含めて肥満細胞の機能指標が全べて活性化するが、ステロイドの場合はヒスタミン生合成酵素のみが特異的に誘導合成される。これらの培養肥満細胞のヒスタミン,プロスタグランジン,HETE,ヘパリンなどの生合成および分泌活性について検討を加えた。分泌活性に関しては、免疫型刺激としてDNP-Asc,抗原,抗体反応,非免疫型刺激としては従来からヒスタミン遊離剤として知られていたcompound48/80から、【Ca^(2+)】依存的に免疫刺激様反応を起こすN-methyl p-methoxyphonylethylamineの13量体オリゴマーを分離し、合成して用いると良好なかつ簡便な抗アレルギー剤のスクリーニング系となることかを明らかにした。以上、本研究から培養肥満細胞を用いて抗アレルギー剤を開発する為の基礎的知見を得た。
|