研究概要 |
1.高精度分染法の確立:微細な染色体構造異常を検出するため2種の方法を確立した。(1)培養細胞収穫前1時間に臭化エチジウム10μg/ml、Colcemio0.02μg/mlを添加する,(2)リンパ球培養3日後BrdU200μg/ml添加17時間、洗浄後、thymidine0.3μg/ml添加6時間、actinomyclnDμg/ml1時間、Coloemid0.01μg/ml20分処理。(1)はルーチン検査に適し(2)はより微細な異常検出に適する。 2.Arskog症1家系8名の患者,Beckwith-Widemann症5家族7名の患者,de Lange症患者3名,Prader-Willi症患者12名,Kabuki make-up症患者1名について高精度分染法で分析した。Prader-Willi症全例に15q11-12欠失を、Kabuki make-up症1名にinv(Y)を認めた。他の疾患では異常は検出されなかった。 3.異常染色体の親起源同定率を高める、高精度分染法とQ-R二重分染法を組み合わせた新しい手技を開発した(Hum.Cenet.1986)。 4.Beckwith-Wiedemann症では染色体異常が発見されなかったので、研究者自身のもつ5家族と文献上の19家族について遺伝学的家系分析を行い、分離比が0.51±0.066,性比が1,男-男伝達がない、患者が3世代にわたる4家族が存在することから、常染色体性優性遺伝疾患であることを証明し、従来の遺伝病か否かの論争に決着をつけた(Am J Med Genet 1985)。 5.乳児型グリセロールキナーゼ欠損症患者5例を集積し、4例で高精度分染分析を行い、全例にXp21.1-21.2の染色体欠失を証明した。この欠失をDNAレベルで確認するために、種々のXp21付近に座位があるクローン化DNAをプローブにして患者核DNAとの間でサザン分析を行った。結果は全例にDNA配列の欠失をみたが、欠失幅は各症例間で異なっていた。共通の欠失はpERT87-15からC7配列の手前までと限定できた。 6.Prader-Willi症由来のクローン化DNAプローブにして6例の患者核DNAとの間でサザン分析を行った。全例欠失のヘテロ個体であった。RFLPはまだ検出できていない。
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