研究概要 |
血清ビリルビン値は肝・胆疾患や新生児黄疸の診断や病態解析に不可欠であり、ジアゾ法によって直接型および間接型ビリルビンとして測定されているが、ビリルビン溶液の不安定性,血清中での存在様式の多様性,標準物質の欠除などの理由でビリルビン測定法を含めて、ビリルビンそのものを再評価することが強く望まれてきた。研究成果の要約を以下に記す。 1.血清ビリルビン種の分離および分画化:高速液体クロマトや高性能薄層クロマトグラフによりビリルビンを非抱合型(Bu),モノ抱合型(mBc),ジ抱合型(dBc),デルタビリルビン(Bδ)などに分画する測定系を確立するとともに、アフィニティークロマト牛技によりBδを高純度に精製することに成功した。 2.ビリルビン種の性質:Bu,Bc,Bδなどの物理化学的性質を検討するとともに、血清アルブミンとの相互作用についても分光・蛍光学的およびクロマトグラフィーを用いて解析した。 3.ジアゾ法の問題点:Bu,mBc,dBc,Bδなどのビリルビン分画に対する直接型および間接型ジアゾ試薬の反応性を調べ、教科書にも記載されている「直接型=Bc,間接型=Bu」の考えが必ずしも正しくないことを実験的に証明した。 4.血清ビリルビン分画の酵素的測定法:ビリルビン酸化酵素のpH特性を利用して、Bu,Bc,Bδなどのビリルビン分画を酵素的に分別定量するための至適条件を検討し、日常検査に応用し得る測定系の確立に成功した。 なお、残された最大の問題は標準物質とくに抱合型ビリルビンの標準物質の調製であり、今後も研究を続ける予定である。
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