研究概要 |
筋内の収縮は, 細胞内のCa^<++>イオン濃度によって制御される. その初期段階を担うのは, 分子量が18000のトロポニンCとよばれるタンパク分子である. 本研究では, トロポニンC分子(ウサギの骨格筋より精製)のCa++イオン結合に伴う構造変化を, X線溶液散乱法で明らかにすることを目的とした. 結果を以下にまとめる. 1.トロポニンC水溶液からのX線散乱曲線は, いわゆる小角散乱に加えて, より広角領域にも明確な散乱を与える. この散乱の模様はCa++イオンの結合によって変化する. 2.X線小角散乱は, そのlnI-S^2プロット(ギニエ・ブロット)で2つの直線で近似できる領域を持つ. この散乱の挙動は, 分子が亜鈴型(二重ドメイン)構造をとっていることで完全に解釈できる. 散乱曲線の解析によって, トロポニンC分子の回転半径(Rg(分子)), N端およびC端ドメイこの回転半径(Rg(ドメイン))ならびに量ドメインの重心間の距離(rn-c)が評価できる. 3.Ca^<++>イオンが結合していないトロポニンC分子は, Rg(分子)=27.8A2F2(コード), Rg(ドメイン)=15.5A2F2(コード)およびrn-c=46.3A2F2(コード)といった構造パラメータで表現できる. Ca^<++>イオンの結合(2および4イオン/分子)に伴い両ドメインはよりコンパクトになり, (Rg(ドメイン)が15.5→14.8→14.6A2F2(コード)となる), またドメインの重心間距離Y_<n-c>も46.3→37.3→34.5A2F2(コード)と小さくなる. つまり分子全体もよりコンパクトになる. この解析の結果は, Ca^<++>イオンが2個結合した分子結晶構造解析の結果(Y_<n-c>(SY【approximately equal】40A2F2(コード))とよく一致する.
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