研究概要 |
幼児期や小学校低学年の子どもたちが積極的な身体活動やスポーツを行った時に, 呼吸循環機能の指標である最大酸素摂取量にどのような影響があるかということについて現在まで十分明らかにされていない. この問題を解明するためには, 幼児期からの運動の影響を追跡的な測定手段によって研究してゆくことが最も確実である. 本研究では, 我々が1980年度に開始した3歳から6歳までの幼児の測定を当該年度まで継続延長することによって, 最も長期にわたる対象には8年間の追跡測定を実施するに至った. また, 毎年新しい対象を加えて, 母集団の数を増加させた. 対象児は, 幼児体育が盛んなS保育園とK幼稚園, および体育活動があまり行われていないM幼稚園の園児全員とした. 1980年以来, 最大酸素摂取量の測定を受けた対象児の延べ人数は, 男子2,298人, 女子2,621人, 計4,919人となった. この測定結果にもとずき, 4〜6歳時における積極的な体育活動は, 幼児期において最大酸素摂取量の増大を導びくという結論を得た. 測定対象児には, 最大酸素摂取量の他に, 形態計測9項目, 身体組成, 筋力(握力・背筋力・つな引き力), 筋持久力(腹筋運動, 背筋運動, ぶらさがり), 調整力(とび越しくぐり, ジグザク走, シャトル走), 走力(25m, 50m, 100m), 跳力(垂直跳, 立巾跳, 3歩跳, 5歩跳), 投力(テニスボール投, ソフトボール投, ドッヂボール投)の測定を実施した. その結果;幼児期における体育活動は, 体力・運動能力の発達を促進させ, 体育活動がない場合との差は, 4・5歳児で特に顕著となる. しかし, 小学校入学直前の時期になると, 体育活動の有無の影響は相対的に小さくなる. 幼児期の体育活動の影響は, 体力面よりも運動のパフォーマンスの面で顕著である. この影響が将来までどの程度有効性をもつかについては, 小学生期にわたる広範な追跡研究が必要である.
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