研究概要 |
本申請研究の主要な研究目的である1)HPLCによるチャージリンの大量精製2)チャージリンの一次構造の解明3)チャージリンの比較生化学的解析の3つの目標を達成することに成功した。まず、HPLCによりチャージリンを大量に精製後、チャージリンの断片ペプチドを得、気相アミノ酸シーケンサーにかけ、アミノ酸配列の決定を行ったところ、13個のアミノ酸配列が確認された。今回決定したチャージリン【II】の断片ペプチドのアミノ酸配列について、既知蛋白質のアミノ酸配列(DNAの塩基配列から推測される蛋白質を含む)とのホモロジー検索を行った。その結果、ラット,マウス,ウシ,ヒトのミトコンドリアDNAに存在するURFA6L(機能や蛋白質の存在が不明)遺伝子のコードすると思われる蛋白質と極めて高いホモロジーが存在することが判明したことから、チャージリン【II】は、その機能が不明であったミトコンドリアDNAのURFA6Lによってコードされていると結論できるものと思われる。 今回決定したチャージリン【II】の断片ペプチドのアミノ酸配列は、高等動物では極めて高く保存されていることが解る。ところが、この領域は、アフリカツメガエル,ショウジョウバエや酵母菌では欠損していた。また、原核生物には、URFA6Lがコードしていると思われる蛋白質とホモロジーのあるものは見い出されていない。従って、チャージリン【II】の遺伝子は、真核生物において初めて出現しさらに進化発展してきたものと推測される。このことは、真核生物が、エネルギー変換効率を高めるための特別のデバイスを獲得したことを意味するかもしれない。 現在進行中のチャージリン【II】の高次構造解析と異種生物間でのエネルギー変換装置の再構成実験から、今後、真核生物が獲得したと思われるエネルギー変換装置の特種なデバイスの実体の全貌が明らかになるものと期待される。
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