研究概要 |
共有結合リポ酸を接合団とするジヒドロリポアミドアセチル及びスクシニル転移酵素(LAT, LST)はピルビン酸及び2-オキソグルタル酸脱水素酵素複合体の構造・機能上の芯酵素であり, 未解決の真核細胞の両酵素の一次構造, 生合成, 局在化と活性発現について遺伝子レベルの解明を試みた. 1.ブタ心筋と肝ミトコンドリア(Mt)の両複合体より両酵素を分離する方法を確立し, 臓器特異性を調べたが全く認められなかった. 2.両酵素に対する家兎抗血清がヒト酵素と強く交さす性質を利用し, 免疫電顕手法で, LSTが心Mtのクリスタ間空間に局在することを観察した. 3.ブタ両酵素合成をコードするmRNAを1齢日子ブタ心から分離し, その翻訳産物の免疫沈降物中に両酵素前駆体の存在を認めた. 更にcDNAを合成し, λgt11ベクターに組込みcDNAライブラリーを作成した. 4.発現ベクターλgt11に組込まれたHeLa細胞cDNAライブラリーから遺伝子産物を免疫化学的に同定する手法でヒト両酵素cDNA断片, 400bp(LAT), 700bp(LST)のクローン化に成功した. これらの放射性標識断片をプローブとし, ヒト包皮繊維芽細胞cDNAのプラスミドライブラリーからハイブリダイゼーション法で両酵素cDNA, 2.3kbp(LAT), 2.9kbp(LST)をクローン化し, 塩基配列を決定した. 又ヒト胎盤cDNAλgt11ライブラリーと免疫化学的手法とハイブリダイゼーション法を併用して1.9kbp(LAT), 2.8kbp(LST)cDNAをクローン化し, 配列を決定した. 5.ブタ両酵素の一次構造をアミノ酸末端から38残基(LAT), 32残基(LST)決定し, 更にカルボキシ末端から各アミノ酸残基決定した. 6.EMBL4に組込んだヒト白血球ゲノムライブラリーから, 両酵素ゲノムDNAを両cDNAをプローブとしてクローン化し, その塩基配列を決定し, 前駆体を調整し, Mt局在化機序を探った.
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