研究概要 |
放射線の子孫への遺伝的影響を検出するには膨大な数の動物を必要とし, 低線量放射線の遺伝的影響を調べることができなかった. 放射線では, マウスのin vivo体細胞突然変位検出法を用いることにより, , 低線量放射線(10R)および低線量率放射線による遺伝子突然変異の誘発を試み, 低線量放射線のヒトへの遺伝リスク推定の資料とするのを目的とした. 1.低線量X線(10R)によるin vivo体細胞突然変異の誘発: PT♀とHT♂を交配し, 妊娠10・1/2日目にX線10R(55-62R/min)急照射を行った. PT-HTF1マウスの毛色遺伝子はa/a, b/+, p/+, Cch/+, d/+, In/+, Pa/+, Pe/+で, 黒色のマウスとなる. 野生型遺伝子に変異がおこると, その変異色素芽細胞由来の部分だけが茶〜灰白色のスポットとなる. 10R急照射では746匹中30の変異(0.04)が検出された. 非照射群では750匹中22の変異(0.03)があり, 130, 110, 65, 32.5Rと線量効果曲線は直線となった. 即ち, 10Rでは閾値に達していないことがわかった. 2.X線緩照射によるin vivo体細胞突然変異の誘発: X線1.0R/min, 110R照射では, F1 116匹中23の変異(0.198), 0.5R/min, 110R照射では, 116匹中25の変異(0.155), 0.1R/min, 32.5R照射では, 59匹中8変異(0.136)が誘発された. 110R急照射(55-62R/min)では218匹中26変異(0.119)であった. 3.標的細胞数と1R・1遺伝子座当りの突然変異率: 全体の毛と変異毛の割合より, X線照射後の生存標的細胞数を求めた. 110R急照射で530, 1R/min, 110R照射で1211, 0.5R/min, 110R照射で, 1853, 0.1R/min, 32.5R照射で約3500, となった. 従って, 1R・1遺伝子座当りの突然変異率は, それぞれ, 1.9×10^<-7>, 1.6×10^<-7>, 0.8×10^<-7>, 1.1×10^<-7>となり, 精原細胞での特定座位法での結果とよく一致した. 生殖細胞障害に1Rと0.5R/minの間で大きな差があることもわかった.
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