研究概要 |
1.大腸菌のアデニルシクラーゼ遺伝子(cya)の転写とCAMPとの関係について解析し, 次のような成果をえた. 1)in vitro転写実験でcyaの転写がCAMP-CRPにより特異的に抑制されることを発見した. 2)CAMP-CRPがcyaのプロモーター領域の特定の配列に結合すること, またそのために転写の抑制がおこることを明らかにした. 3)培地中のCAMPレベルを人為的に変動させ, 細胞内でのcya遺伝子の転写におよぼすCAMP-CRPの効果を, S1ヌクレアーゼ法およびRNAドットブロット法で解析した. この結果, CAMP-CRPによるcya転写の抑制は細胞内でも実際観察された. 4)cya-lac融合遺伝子を作製し,in vivoにおけるcyaプロモーターの発現におよぼすCAMP-CRPの作用を解析し,その転写抑制効果を確認した. 2.大腸菌全ゲノムから調製したDNA断片をプロモーター検索用のlac融合遺伝子ベクターにランダムにクローニングした. この中からプロモーター活性を有するクローンを集め, さらにそれらの中からその発現がCAMPにより調節されるものを収集した. 約100個のプロモータークローンのうち, 5個がCAMPにより活性化され, 1個が抑制された. S1スクレアーゼ法でCAMPによる発現の調節は転写レベルで行われていることを明らかにした. CAMPにより転写が活性化されるクローンのうち3個の塩基配列を決定し, 既存のDNAデータバンクと照合したところ, 2個については未知の遺伝子であった. この2つのプロモーター領域には転写開始点上流にCAMP-CRPの結合配列が存在した. 他のしつのプロモーターは熱ショックタンパク質の1つC62.5のプロモーターであることがわかった. この領域には, 典型的なCRP結合配列は存在しなかった.
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