研究概要 |
植物細胞・組織の超低温における生存・障害の機構を明らかにしていくために, プロトプラストと培養細胞を主に用いて以下の研究を行った. 1.異なった植物種から単離したプロトプラスト・培養細胞を用い, 種々の凍害防御剤の存在下で, 様々な凍結隔解条件での細胞の生存率の変動を調べた. その結果, 最適な凍結条件が細胞・組織によって僅かに異なっていることが明らかになった. また, 凍結隔解したプロトプラスト・培養細胞の呼吸などの生理活性について調べた. 2.プロトプラスト・培養細胞のほかに茎頂を用いて, 細胞の生存率の迅速な測定法の開発について検討した. その結果, 従来から一般に用いられている生存率の判定方法とは異なった・細胞内の微量のATPを短時間に測定するルシフェリン・ルシフェラーゼによる測定法を確立した. これによってきわめて少数の細胞の生存率の測定が可能になった. 3.種々の植物のプロトプラスト・培養細胞を用いて, 様々な培養条件での耐凍性の変動を調べてきた. その結果, ゼニゴケプロトプラストがその培養過程で耐凍性が著しく高まることが明らかになった. この耐凍性は, 培養による細胞壁再生のごく初期(18〜20hr)で最も高まり, その後の細胞分裂の開始とともに低下すること, 再生した細胞壁を再度除くと耐凍性も消失することから細胞壁の再生と密着に関連していることが示唆された. この耐凍性の高まった再生細胞は-196℃に耐え, 融解後は正常に増殖した. このプロトプラスト・再生細胞を用いて冷凍顕微鏡による凍結像の観察, 高浸透圧下における脱水による細胞の変化の解析, さらにフリーズフラクチャー法による超微細構造の観察から, この両者の障害機構の違い, プロトプラスト培養における耐凍性の増大機構について考察した.
|