研究概要 |
ダイズ(Glycine max L.Merr.Cv.A62-1)に根粒菌と菌根菌を接種して三者の共生を行わせたとき根粒の発達及びその機能等に如何なる影響が及ぶかを研究した。菌根区と無菌根区(対照区)をもうけて比較した。菌根区のほうが地上部・地下部の新鮮重とも、対照区より高く、実(種子生産)の数および実の新鮮重も菌根区のほうが有意な増加を示した。菌根はVA(Vesicular-Arbuscular)菌根菌の感染によるものであり、初期の根には分岐体(Arbuscules)の形成が多くみられ、生育の後半に嚢状体(Vesicules)が作られた。胞子,嚢状体の形態から菌はGlomus属であると判断した。茎あるいは葉の無機要素は乾物重あたりにおいても、菌根区のほうがP,Mg,Caの含量が高く、器官あたり、或は1個体あたりであらわすとP,Mg,Caの含量は菌根区のほうが、より大きな値となった。菌根区の根粒のP含量は対照区の根粒より、はるかに大きな値を示した。根粒形成は菌根区のほうが対照区に比べ、根粒数,根粒新鮮重とも大であり、生育が進むにつれて対照区との差も大になった。アセチレン還元法により測定した根粒1個体あたりの窒素固定能も、窒素固定の総量も菌根区のほうが高かった。別に無菌根区でPレベルのみを変えてダイズを栽培してもCa,Mgの吸収が促進されることはなかったので、菌根区におけるP,Ca,Mgレベルの上昇は菌根菌の菌糸が吸収したものと思われる。菌根区と対照区のオーキシン,ジベレリン,サイトカイニン含量には差が認められなかったが、アブシジン酸様物質は菌根区のほうが多かった。土壌からVA菌根菌胞子を取り出すため、ナイロンメッシュ濾過と蔗糖密度勾配遠心の条件を確立させることができた。土壌PH6.9のときVA菌根の効果が最も顕著に発揮された。菌根の菌糸によりP,Ca,Mgの吸収が促進され、それが根粒の着生,発達を促進し、窒素固定活性も高まることが確認された。その結果としてN含量が増加し、種子生産が増加したと考える。
|