研究概要 |
心臓には特定の興奮伝導経路が存在し、血液循環のポンプとしての心臓の合目的々な収縮・拡張を実現している。この伝導経路に従って、心筋細胞は洞房結節,心房筋,房室結節,プルキンエ線維,心室筋に大別される。本研究は、各心筋のイオンチャネルモデルを用い、興奮伝導現象を解析し心電図の再構成を行ったものである。 (1)上記5種類の心筋細胞が一次元に並んだ数理モデルを用い、興奮伝導に対する各細胞のイオン伝導のダイナミクスと細胞間の電気的結合の機能的役割を調べた。その結果、まず、見かけの空間定数から結合係数を定量的に決定できることを示し、洞房結節がペースメーカとして機能するための細胞数と結合係数についての条件が求められた。次に、房室伝導での伝導速度の極度の低下の原因を考察し、結合係数の大きさが最大の原因でするという結果を得た。更に、房室結節では、部位によって活動電位波形が三通りに分かれることから、構造的にも異なる三つの領域があるという考えに対し、そのような仮定をおかずとも、心房筋,プルキンエ線維が両側に接続されることによって、波形の違いが自然に得られることを示した。 (2)イオン電流モデルで表わされる細胞を、心臓の形状を単純化した二次元領域に配列し、心電図の再構成を行った。はじめ、プルキンエ線維のモデルとしては1975年のMNTモデル,心室筋のモデルとしては、1977年のBRモデルを用い、正常心電図,低カリウム症および高カリウム症の心電図を再構成した。その後、Nobleがプルキンエ線維のモデルを更新したのにともない、GEAR法を導入して数値計算法の改良を行ない、イオン電流モデルの更新にも対応でき、より実際の心臓に近い配列のモデルによって心電図を再構成し得るシステムを作成した。
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