研究概要 |
本研究は, 言語・行為・志向性と云う哲学の基礎的概念の連関の把握を分析, 哲学・現象学・解析学等の主要な現代哲学の立場からの考察を通じて行い, 更に歴史上の諸哲学理論の再検討への適用を目的としている. 最終年度に当り, 研究全体を総括すべく, 以下の三点に留意した. (1)現代哲学の諸立場の個々の成果の成果の間に可能な接点を見出すと云う当初からの課題を更に広範囲に推進する. (2)上記の概念を巡る哲学史研究を, 特に「志向性」概念に関する中世以降の思索展開との連関に於て, 行う. (3)上記の概念の周囲の諸概念をも含めて, 連関の様相を見る. 以上の研究方針に基づき, 具体的には次の研究成果を達成した. 研究代表者渡辺は, 主として現代の諸哲学, 例えば構造主義, 解釈学, 分析哲学, 現象学等の相互関係を吟味検討した. 研究分担者坂部は, 西欧哲学の概念史的研究・日本語の解釈学的分析・日本の哲学思考の伝統の再検討による問題への接近を試みた. 分担者松永は, 行為の概念が典型的なものから境界的なものへ拡張される際の論理を態度や姿勢の概念に於て検討した. 分担者武笠は, 意図的行為を巡る前年度の研究成果を応用し, 意志薄弱の概念の正当化と云う伝統的問題の解決を試みた. 分担者菊地は, ヘーゲルの弁証法をカントのアンチノミー論との関係から解釈する作業に着手した. これら研究成果を各自著書・研究室紀要・雑誌論文等の形で公表し, 併せて研究会に於ける討論によって相互啓発を行い, 各自の研究の独創性を深めるべく努めた. 研究成果報告書に総括する様に, 哲学研究に於いては安易な協同や総合はなく, 短期間の研究といえどもその総合は歴史の手に委ねる他はない. 具体的問題での各自の成果という鏡に体系的総合の予兆が映ずる様を以て, 本研究の最終成果としたい.
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