研究概要 |
手の神経上向系はほゞ完全に交差している。したがって、右手によって入力された情報は左半球に投影される。視覚や聴覚による実験結果からは、右脳がパタン認知や同時的処理をつかさどり、左脳は言語処理や継時的処理を行なっていることがわかっている。そこで点字を触読する場合に、右手で読んだ方が能率的であるか左手で読んだ方が良いかという問題が論議されている。今回の研究では、優れた点字触読者が左右いずれの手による読みを得意としているかを確かめるとともに、その読み手の触読行動を分析して実際にはどのような点字情報の処理が行われているのかを検討することにした。点字習熟者の点字触読行動をVTRカメラで記録した。その際、、難易度のほゞ等しい3種の読材料を用意し、両手読み,右手読み,左手読みを被験者にさせた。13名の被験者のうち、読速度の優れた者は右手による読みが優位である者であった。したがって、点字読みの場合も視覚と同じく文字の処理が左半球でなされていることが示唆された。次に優れた右手優位の被験者の両手読みの行動を分析したところ4つ方略が行われていることがわかった。1つは左手人差し指による触読で右半球によるものと考えられた。第2の方略は両手人差し指をそろえるもので左右の半球が関係していると考えられた。第3のものは右手による読みでこれは左半球が関係しているもので、これらの被験では長い時間がこの方略についやされた。第4の方略は左右の手指が同時的に別の情報を入力している行動で、触読の場合は2チャンネルの入力の存在が示唆された。
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