研究概要 |
本研究は、並立連鎖スケジュールによる同時選択場面及び採餌スケジュールによる継時選択場面での選択の決定因である強化量と強化の遅延時間の2次元間の相互作用の問題を主にラットを被験体として組織的に検討した。同時選択場面では強化量比を3対1とし、遅延時間比3対2となる4種の遅延時間の組合せ(4:6,20:30,40:60,80:120秒)について選択を行なわせたところ、遅延時間の純対値が大きくなるにつれて大強化量側の選択が増加したが、最後の80:120秒条件では逆にやや減少することが認められた。また、2種の遅延時間(5と20秒)のもとで4種の強化量比(1:1,1:2,1:3,1:5)を組織的に変化させたところ、強化量次元に対する選択率の変化は短い遅延時間(5秒)よりも長い遅延時間(20秒)のときの方が大きいことが見出された。さらに、継時選択場面でも、小強化量の餌(ペレット1個)の処理時間を一定(15秒)に保ったままで大強化量の餌(ペレット3個)の処理時間(15,25,45,65及び90秒)を組織的に変化させたところ、大強化量の餌の処理時間が増加するにつれて小強化量の餌の選択がおよそ20%から100%へと増加することが認められた。また、小強化量の餌の選択率が50%を越えるときの大強化量の餌の処理時間を求めてみると30秒以下となることが見出された。これらの事実は、強化量と遅延時間の効果が等価であると仮定した場合の予測とは異なるものであり、むしろ遅延時間の効果が強化量の効果よりも大きいことを強く示唆するものといえる。これらの事実で示された強化量と遅延時間(処理時間)の相互作用はすでに筆者ら(Ito & Asaki,1982)が見出したベキ関数によってかなりの程度説明できることが認められたが、今後さらに各場面でのより詳細な実験的検討が必要と思われる。
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