研究概要 |
室温に放置したサーミスタを皮膚に装着して皮膚温の測定を行う場合に、サーミスタが皮膚から熱を奪い加温されてくることや、装着に際しサージカルテープ等でおおわれることによるうつ熱により、みかけ上測定値は測定開始時より上昇する可能性があり、それを実験操作に基く皮膚温の上昇とみあやまることが多い。この研究では、測定開始直後の測定値は真の皮膚温より低く、時間経過とともに上昇し真の皮膚温に近づくのではないかということを検討する目的で行った。 73名の資料をえたが、前期実験の56名の資料はコンピュータの誤動作があったのですべて棄却し、装置を改良した後期実験の17名の資料のみを分析の対象とした。宝工業製の直径2mm,長さ12mmのサーミスタ(SZL-64)をサージカルテープで、前腕,手掌,手背,足底,膝,額に装着し、室温とともに宝工業製のサーミスタ温度データ集録装置でディジタル記録した。 実験は5min間の安静閉眼につづき、各種刺激が提示される36.7±5.1minにわたった。室温は開始時22.0±1.6℃,終了時21.9±1.8℃に空調されていた。 測定開始時から4minまでに、手背,膝,額の3部位;4minから5minにかけて膝のみにではあるが測定値の有意な上昇がみられ、上述の可能性を暗示している。しかしこれらの間にあっても、前腕,手掌,足底では有意な上昇はみられず、断定するには至らなかった。 5min以降,手掌,足底ではいちじるしい下降がみられた。両部位はいずれも精神性発汗部位であり、5min以降は刺激実験事態であるから、精神性発汗による皮膚温下降の可能性も考えられる。その他の部位も概して下降ぎみであり、少なくともうつ熱によるみかけの温度上昇の可能性は否定された。その他若干の考察を行った。
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