研究概要 |
地域社会の構造を、意思決定という側面から分析していくことを課題としこの目的を達成するために、地域社会の具体的制度存在としての自治体を対象とし、間取り調査とアンケート調査によって総合的分析を行なった。成果報告書では、福島県に所在するS市の事例を中心にとりまとめた。 1.自治体行政とその運営 意思決定のイシューを特定化し、その背景を理解するために、行政の主要な領域,事業について明らかにした。その中でも、S市におけるもっとも大きな争点は、旧駅前及び新幹線新駅前の区画整理事業であり、個別的及び政治的利害関係をめぐって様々な問題を出現させている。二番目の主要課題は市政全般の運営にかかわる財政問題であった。 2.地域経済の特性とその変化 地域社会環境の変化として、近年急速に進みつつある工業立地と、それに対応した積極的な誘致行政が挙げられる。元来、農村地帯の中の商業集積として位置していたS市において、急速な変動が生じつつあり、行政及び市民生活に大きな影響をもたらしはじめている。長らく、城下町からの継承として安定的状態を維持してきたS市も変動期に入りつつあると判断される。 3.地域政治の運営と構図 市政の最上層部に着目すると、S市のリーダータイプは官吏型から地元市民代表型,そして経営管理型へと推移してきた。そして、現在のトップリーダー層は行政幹部,産業リーダー,議員によって構成されている。そして、地域リーダーの中に専門家,知識人層が含まれている。したがって、S市においては政治,経済,知的リーダーという層が運営の中心に位置し、意思決定場面では、いずれかの領域リーダーが突出するということなく、バランスのとれた機能を発揮している。
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