研究概要 |
道北の過疎地域を背景にする名寄市は上川北部地域の経済生活圏の中核としての役割を担っている. この地域においても, 産業基盤の変貌などが家族のありよう, 子育ての姿に影を落としている. そのような子育ての実態を調査により明らかにするとともに, 今後の子育ての援助体制を考えるというのが本研究のねらいであった. 1.本研究の中心となる, 名寄市における一歳半および三歳の健診の全対象者に対する育児実態の調査からは, 基本的には大都市部の調査で明らかになっている子育ての問題と共通していること, しかし転勤族の多さなどこの地域特有の問題があることが明らかになり, 今後の施策に活かせる示唆をえた. 2.名寄市以外の過疎農村部の育児実態の解明には大規模な質問紙法の調査はなじまず. 聞き取りなどの方法により調査を行った. その結果名寄市部とも明らかに異なる問題があることが実態として確認でき, たとえば極端に仲間あそびの経験が少ない, 医療機関をはじめ行政サービスへの接近が困難, などのマイナス要素とともに, 祖父母の援助, 親自身の生育地であることなどを反映して育児不安が低い, などが明らかになった. 3.道北の母子保健の聞き取り調査からは, 医療過疎の地域における子育ての専門家である保健婦などの果たす役割を再認識させられ, 力量のある専門家集団が育ち根づくことが大きな課題であることを確認した. 4.子育ての社会的システムについて, (1)医療・保健施設と専門職員, (2)社会教育施設と社会教育活動の, 配置状況, 連携のあり方, などの検討を行った. 母子保健活動の先進例, 保育の集団化の自主活動例, などの調査からも立論のための示唆を得た. これらの成果を取りいれつつ, 名寄市の役割として, 周辺町村の子育てへの援助機能としての医療・保健・児童文化・社会教育などの体制の充実が求められている.
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