研究概要 |
中国に来たプロテスタント宣教師は、多くの中国語著作を執筆し刊行した。これらの諸著作は、中国語の聖書やキリスト教布教書だけではなく、ヨーロッパの近代文明に関する多くの著作がある。この研究において、昭和60年に私はW.A.P.マルティン,E.C.ブリッジマンおよびW.ミュアーヘッドの中国語著作について調査した。特にマルティンの『万国公法』、ブリッジマンの『聨邦志略』およびミュアーヘッドの『地理全志』『大英国志』が中心となっている。ついで昭和61年に私はホブソンの諸著作、特に四種の中国語医学書について調査した。これらの中国語著作を刊行することによって、来華宣教師は中国人の間に西洋文明を普及させることを計り、その影響がやがてキリスト教の福音を伝える上にも、良い効果をおよぼすことを期待したのである。 以上の考察に加え、これらの諸著作が幕末明治初年の日本に大きな影響をおよぼしたことに注目しなければならない。日本の知識人は漢文を容易に読めるので、かれらはこれらの中国語著作を読み、ヨーロッパ文明に関する知識を獲得する上に活用したのである。これによって考えてみるに、中国と日本とは、宣教師の中国語著作による影響を通してみても、非常に密接な関係にあったということができる。
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