研究概要 |
南宋の楼ちゅうが著した農耕蚕織図絵「耕織図 は、後世多くのも本が作成され、近隣の朝鮮や日本にも将来され、それぞれの地で新たに臨も、版刻された。そして絵画芸術の分野はもとより、挿絵を有する農桑技術書の誕生に大きな影響を及ぼした。これらの「耕織図」関係資料は、まだ全容がつかめておらず、その意義も充分理解されていない。61年度の研究最終年には、国内に所蔵されている「耕織図」関係資料の発掘に全力を傾け、愛知県田原町崋山文庫蔵渡辺崋山も狩野永納刻本「耕織図」,名古屋城黒木書院四季耕作図襖,兵庫県香住町大乗寺蔵呉春筆四季耕作図襖,東京大学史料編纂所蔵「たはらかさね耕作絵巻」を調査した。また海外の所蔵品については、書信で中国北京の中国歴史博物館および韓国ソウルの国立中央博物館と連絡をとり照会した。別に文献史料を渉猟して、両面からの調査により、楼ちゅう画の系譜の全容を解明することができた。成果については、昭年61年度京都大学東洋史研究会大会で口頭発表し、また論文としては、『東海大学紀要(文学部)』第46輯に発表し、一応研究を終了することができた。残された問題としては、二点ある。すなわち第一は、「織図」の調査が不充分であったこと。これは養蚕技術分野の農書に大いに関係があるので、別の方法を用いて研究解明する必要がある。第二は、調査完了間際に知った、高野山遍照尊院蔵「織図貼交屏風」の存在である。これは従来全く知られていなかった「耕織図」であり、今後新たに調査すべき資料であろう。
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