研究概要 |
連歌資料(連歌作品、連歌学書、連歌辞書など)の国語学的研究においては、まず資料の収集に多くの努力を要した。『連歌貴重文献集成』など公刊されたものばかりでなく、写本の閲覧、筆写などを要した。次に本文作成では、公表されている翻刻も、写本と校合するに、かなりの訂正を要することが判明したが、国語学的厳密さによる本文研究は重要である。米翻刻資料も多く、また活字化されていても、写本の異なること多く、校合作業を要した。 語彙研究には、索引作成が欠かせない。連歌作品の中で価値の高い、宗祇関係千句連歌七種(熊野千句、河越千句、三島千句、美濃千句、美濃十花千句、葉守千句、永原千句)については、底本を定め、自立語彙引の作成を完了した。この語彙カードだけでも31,000枚になる。 次いで、宗祇の連歌句集(蓋草、老葉、下草、宇良葉)の自立語彙引作成にとりかかり、ほぼ完了した。莵玖波集、新撰莵玖波集の二選集についてもその重要性から研究を進めるべきで、共に既刊索引はあるものの方針に異論を抱く点が多く、これもカード化を実施した。 語彙資料として、辞書は重要で、詞林三知抄、〓材集などは、利用し易いように編成し直した。以上の如く基礎的作業に多くの努力を必要とした。 連歌語彙の研究面では、計量的全体把握を行い、語彙表の作成、意味分類の実行、更にその図式化の試みなどを行い、発表した。これらは全て、未だ類似の研究がないものであって、殊に図式モデルの公表は、完全な独創であると思う。 また、文法面でも、助詞・助動詞の注目すべき例を集成しており、今後発表してゆくつもりである。句の連接法については、小論一種を公表した。 以上の如く、語彙を中心として研究は大きく進んだので、索引の公刊などに今後の力を注ぐことになる。
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