研究概要 |
1.近世前期 (1)弘前市立図書館蔵『官家文集』の発見によって、堂上派公武歌人の和歌以外の文学活動(特に和文)の実態を究明する手がかりを得た。 (2)刈谷図書館蔵『泉山続景境詩歌集』の発見によって、坂静山の活動の一端が明らかになり、60年度の『和歌泉杣』とも相俟って、堂上派の下級幕臣層に勢力を占めた静山の学統の解明が進展した。 2.近世中期 (1)6月の和歌文学会(於東洋大学)で発表した「明和安永期江戸歌壇と渋谷室泉寺」によって、伊藤松軒,萩原宗固,石野広通らの活動を中心にした中期江戸歌壇の実態を明らかにした。 (2)9月、12月に発表した、林笠翁に関する二篇の論文によって、荷田在満,賀茂真淵,揖取魚彦ら古学派と堂上派の接点、また江戸歌壇と地方(佐倉藩,仙台藩)歌壇の関係の一端を明らかにし得た。 3.近世後期 (1)『向南集』(北村季文一門の撰集)の翻刻と解題の完成(古典文庫,目下校正中)によって、松平定信圏の文化の特質の解明に寄与し得た。なお、定信,正敦,季文の『堀河後度百首題三吟百首』の草稿本を入手し得たので、この面の研究は更に進むであろう。 (2)成嶋司直の資料収集が進んだので、北村季文に対抗する堂上派内の一派の研究に展望が開けた。 4.地方(武家堂上派)歌壇の資料収集 仙台伊達藩,盛岡南部藩,薩摩島津藩などの資料収集が進み、京都(公家宗匠家)【←!→】江戸(江戸宗匠)【←!→】各藩国元・幕臣という堂上派歌壇構造の姿が明確化された。
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