研究概要 |
本研究は絵画,叙景詩,戯曲等の分析により、精神現象学的方法によって、17.8世紀における眺望の主題が、政治,宗教,美意識等を背景として、どのように変化し、その変化は精神史的に何を意味するかを考究せんとしたものである。シェイクスピアの史劇における英雄の視座はエリザベス朝からジェイムズ朝期にかけた政治の危険なバランスを象徴していること、そしてその裏に宇宙を背景とする広場恐怖的世界像のあることが分かった。18世紀の眺望の視点は理神論における超越者の視点であり、そこから眺める世界は分類と配置の原則に則っていること、それは又他律的相対性の世界像と合致し、依存と連鎖の機構を背景としていることが分かった。これは叙景詩における絵画美の原則による自然描写、ホガースの絵画における人物と外界とをつなぐ遠近法にも窺われた。つまり17.18世紀の眺望はその視点を占める存在がすべて視野を規制している。そこで我々はその典型的例をデナム,マーヴェル,ブラックモアにとり、研究成果の報告書とした。つまりデナムにおける視点の固定からマーヴェルにおける視点の移動のプロセスには17世紀における共和制という政治がからみ、眺望の形式は価値を遠隔化する働きをしていること、そして18世紀のブラックモアの場合には17世紀におけるタブローの問題とその波紋をひきずりながら、政治的には現状維持を精神的には知の拡散を内包していることが明らかとなった。 以上は報告書以外にも雑誌等に部分的に発表され、「眺望現象研究会」において討議検討された。更なる我々の問題は視点と視野の空間学である。
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