本研究の最終目標は、我国で編集された仏語書の研究を通して、幕末維新期におけるフランス学の研究を解明せんとするものである。我国におけるフランス学の総合的研究を完成させるためには、次の三つの研究が必要不可欠なものと考えられる。 1)仏語書を中心とした語学的研究 2)日仏文化交渉史の研究 3)仏語教育史の研究 以上あげたた三部門の中から、本研究では従来からの研究成果をその基礎として応用できる、仏語書成立過程を中心とした語学的研究に着手した。 具体的内容としては、何れも当該年度内に大学紀要に発表してきたが、昭和60年度は、「村上英俊の『三國會話』考」。我国の仏学始祖とよばれる村上英俊の著作、『三國會話』に関しては簡単な紹介がなされているだけで、詳細な研究はみられなかった。ところが、研究発表者はこの書の特殊性に注目し、英俊の拠った原典が那辺にあるのか、この問題に焦点を当ててみた。幸いなことに、その原典とも思える一冊の書物を入手することが出来、それが外国で出版された三ヵ国語対照の会話辞典であることを解明した。さっそく両書を詳細に調査し、比較検討の結果を大学紀要に発表したことは、前述の通りである。 次に昭和61年度としては、「我国最初のフランス語研鑽とその歴史的背景」という題にて執筆した。長崎のオランダ通詞がどのような過程をへて、我国最初の仏語辞書ともいえる「拂郎察辞範」(稿本)を作成するに至ったか、実証的な手法を用いて明らかにした。 従来の研究成果は、当該年度分も含めて、一冊の著書となり刊行されるものであり、今後はその研究を継続しながらも、仏語教育史および日仏文化交渉史の研究へと発展させたい。
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