1.この研究は、国際法の法源をめぐる学説から検討を始め、そこでは国際法の成立形式に重点がおかれ、主たる法源としての条約と慣習法のほか、法の一般原則がときに強調されることをまず確認した。しかし、これらの法源の形式に内在する限界から、それらだけでは変動期にある現代国際社会の要請に十分対応しえない。そのため、新たな法源論の構築が要請されるが、ここでは新法源創出の企てとして国連総会決議の法的性質の問題、および、すべての国に普遍的に適用される国際法規範の創出つまり国際立法の問題の両面からアプローチした。 2.国連総会決議の法的性質をめぐっては、国連憲章起草過程や憲章の文言からは、その勧告的性質をこえて法的拘束力を認めることは困難である。しかし、学説上、総会に準立法機能を与えようとする提案や一定の条件下で決議に法的拘束性を認める意見も強い。最近、万国国際法学会がこの問題を取り上げたことは注目される。同学会では、総会決議の起草手続や技術と決議の法的性質の間の関係が論じられ、とくに国家のための一般的抽象的作為規則を定める規範的決議に関心が集った。結局、個々の結議の起草・採択状況と内容からその法的性質を判断せざるをえない。 3.国際立法つまりすべての国にその同意と関係なく適用さるべき国際法規範の定立は、現代国際社会で要請されているが、従来の国際法構造上困難とみられる。国際立法機関の不存在にもかかわらず、今日一般利益をもたらす多数国間条約の締結が関心を呼んでいる。もっとも条約による国際立法は、「条約は第三国を益しも害しもせず」の原則から理論上難点がある。最近、国連報告書などで、多数国間条約の定立過程に着目し、その改善により多数の条約当事国を生みだし、国際立法に近い効果をもたらそうとする企てもなされている。
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