研究概要 |
この研究は、遊水地の役割ならびに土地の権利関係について、実証的に考察することを目的としている。遊水地とは、洪水の場合に、水を一時滞留させる土地をいい、その設定は、堤防の嵩上、ダムの建設、河川の拡幅、放水路の堀削などともに、洪水対策の一方法である。遊水地の権利関係としては、所有権の取得、地役権の設定、今後の被害補償前払いによる使用、その他である。これらは、遊水地の設定者・管理者と土地の所有者・利用者(同時に被害者)との相互関係となっている。建設省の資料によれば、遊水地は、大久保(最上川),一の関(北上川),南谷地(迫川),蕪栗沼(小山田川・菅刈川),品井沼(高城川),渡良瀬(渡良瀬川),菅生,稲戸井,田中(以上利根川),小田井(庄内川),犀川(犀川),上野(木津川),岡端(日下川),馬越(渋川)であり、治水緑地・多目的遊水地は、沖館川(沖館川),桜川(桜川),芝川(芝川),綾瀬川(綾瀬川),巴川(巴川),新川(新川),寝屋川(寝屋川),恩智川(恩智川),坪井川(坪井川)である。実証的研究という立場から、沖館川,坪井川を除いて、すべて現地を見学し、主として権利関係を調査した。所有権の取得は足尾鉱毒事件に関連してつくられた渡良瀬,堀削を必要とする岡端,馬越,都市河川を対象とし、公園造成などの他目的と合わせておこなう治水緑地・多目的遊水地(小田井,犀川は事実上これに含まれる)、地役権の設定は、蕪栗沼で、一部登記を終了し、大久保,一の関,上野もこれによる方針である。今後50年間におこる被害を予測し、その補償をして使っているのが南谷地で、品井沼もほぼ同じである。菅生,稲戸井,田中は、「入植時のいきさつあり、補償の必要なし」として、遊水地とされている。所有権の取得以外は、それぞれ問題がある。地役権の設定は、対価の支払いはあるが、現実の被害補償はない。被害補償の前払といっても、現実とは異なる。
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