本研究では、これまでに、(1)社会福祉行政に独特であるとされる「措置」をめぐる諸問題についての法学的検討、(2)社会福祉施設の利用権について保育所入所に関する裁判事例の分析を通しての検討、および、(3)最近の社会福祉制度改革についての法的側面からの検討などを行うことができた。(1)についていえば、社会福祉施設の入所措置処分、措置委託、社会福祉施設利用関係、措置費、費用の徴収について法的側面から検討し、現行の「措置」制度は、国および地方自治体が自らの事業として社会福祉サービスを提供する仕組みであると結論づけた。ついで、この観点から最近の「措置」制度改革論の若干の論点を批判的に検討した。さらに、「措置」制度改革論者が提唱する社会福祉施設の利用方式を入所措置処分(行政行為)から契約に改めることは、社会福祉における公的責任の重大な縮小であることを指摘した。(2)については、保育所未入所措置の違法を主張した損害賠償請求事件に対する東京地裁昭和61年9月30日判決、および、保育所入所措置の継続を要求した行政訴訟に対する仙台地裁昭和61年7月29日判決に即して考察した。(3)については、いわゆる機関委任事務整理合理化法(昭和61年法律第109号)による社会福祉事務の地方自治体への委譲問題について、とくに児童福祉法24条、56条改正に即して考察した。
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