研究概要 |
一般予防論の最近の動向の一つとして, まず, 西ドイツの積極的一般予防論について考察検討した. ヤコブスによれば, 刑罰の任務は, 社会的接触のための方向付けモデルとしての規範の維持で, 刑罰は, 規範信頼法への忠誠帰結甘受の訓練で, 規範認知の訓練と要約される. ルーマンの社会システム理論に依拠するもので, 刑法システムの主たる機能は, 違背された規範的予期を坑事実的に固持し, 規範違反者の負担において, 法への信頼を強固たるものにし, 全システムを安定させる点にある. ハッセマーの理論は, 行為応報の限定的構想を深く内在させる点に特色がある. 積極的一般予防論の長所は社会統制の全構想の中によく組み込まれ得ること, 法益保護を, 法律を正当として是認する市民の確信によって達成しょうとする点である. しかしながら, この理論は, 規範的立場の強い理論て, 規範的予期が重視・強調され刑法の適用範囲が拡張される傾向にあることが批判される. ルーマンでは, 世界は複雑性として観念され, 社会=歴史の存在構造を捨象し, その実体を喪失している. 他者の規範意識を強化するために, 威嚇予防同様, 犯罪者は社会あるいは個人の利益をもたらす道具とされる傾向がある. ヤコブスが行為無価値論をとる点も批判. ハッセマーの行為応報も疑問. 犯罪行為は過去に実結したものではなく, 将来の変化として達成され得るものと結びつくこと, 行為と刑罰とは, どうひねってみても, 比較し得る量(もの)ではないことによる. なお, 英米・北欧等の一般抑止の三要件について. 刑罰の厳格性と確実性との関係について, 厳格性は独立では犯罪の抑止効果はなく, 確実性を前提としてのみはじめて効果を生ずることを指摘する. 抑止研究が無視してきた刑罰の迅速性についても研究. つい最近ウイリアムズとホーキンズが従来の一般抑止の知覚的研究の内容に投じた疑問を手がかりとして, 一般抑止の知覚的研究の問題についても論じた.
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