研究概要 |
本研究の課題は、両大戦間期において、産業企業が展開した投資行動が、資金調達面でどのような枠組に支えられていたかを明らかにすることである。そのため、第一に株式市場について、株主層の存在形態(地域別,階層別,職業別)を検討し、第二に社債・貸付金などを中心に銀行及び機関投資家などの資産運用を明らかにすることとし、具体的な手がかりとして、1919年末現在の株主データの整理・分析を行なった。 その成果は、別に発表した通りであるが、個人投資家の位置が極めて高いなどの、これまでの研究で指摘されてきた事実が再確認されるとともに、先行する代表的研究である志村嘉一氏の『日本資本市場分析』について若干の問題点があり、修正を要することが明らかになった。 また、他の年次との比較については、1925年のデータが日本郵船などの有力企業を対象外としているため、直接の比較を断念して今後の課題とし、17年末との比較を試み、第一次大戦中という激動期に、わずか数年の間に上位株主に移動がかなりみられることなどが判明した。 以上の研究成果によって、今後さらに資本市場分析を実証的にすすめるための準備が整ったと思われる。この成果を生かすため、産業企業の財務データの収集整理によって、資金の需要者の側の分析を進めることを計画している。
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