研究概要 |
領事制度は、近世初期欧州各国商人の海外進出の過程で、商人活動を保護する必要上発達した制度である。イギリスの領事も17,8世紀の間、その数が漸次増加をみたが、19世紀中頃以降国際商業戦争が激化するにつれ、海外通商拡大のために、領事の果すべき機能を含め、領事制度がいかにあるべきかが、しばしば議会で討議された。 すなわち1858年の「領事職務に関する調査委員会」、70〜72年の領事制度の改革、86年の外務政務次官ブライスのメモ、1903年の「ウオルロンド委員会」、1912年及び14年の「領事職務に関する委員会」などで討議され、そのつど制度改革が行われた。討議の対象となった領事制度の主要な問題点は、(1)領事の徴収する高い手数料 (2)領事の質的改善のため国家官僚組織への編成と領事養成制度の確立 (3)領事の情報活動の適合性等である。 一方、領事の情報活動の適合性に絡み、「領事報告」のあり方が問題になった。とりわけ1880年代の不況期に際し、イギリスの貿易低落の原因が、海外通商情報戦略の遅れに由来するのではないかという見地から、領事報告の改革が断行された。 一つは、1854年以来「Blue Book」として年1回公刊されてきた領事の商況年報に代って、1886年7月から月刊「The Board of Trade Journal」の発行に踏み切ったことである。もう一つは、モノの情報センターとして商品陳列館の設置が議題に上ったことである。 こうした改革にもかかわらず、イギリスの海外市場はドイツ、アメリカなど新興国の進出に押されて後退を重ねていた。1898年議会に提出された「領事意見集録」は、イギリス商人の商取引にこそ反省すべき問題があると指摘していた。
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