研究概要 |
本研究の目的は、現実の税制が政治過程を通じてなされる集合的意思決定の場で、いかに選択されるのかを公共選択論(Public Choice)の枠組みの中で理論的・実証的に解明することである。 昭和60年度は、必要文献リストに基づき未入手の図書・資料を入手した後に研究整理を進めて、租税の正統的な経済分析との対比において公共選択論による租税分析の特徴を明らかにし理論的な研究の草稿をまとめた。加えてこの草稿をもとに、慶應の公共選択研究者グループと議論する研究会を開催し、改善点等のコメントをもらった。 昭和61年度においては、上記の理論研究草稿を完成論文にする努力を行なうと同時に、種々の多変量解析による実証的研究を実施した。理論的研究の成果は、すでに「現代租税理論の展望」と「税制の公共選択分析」として発表した。他方、多変量解析による実証的研究については、種々の計測を実施し相当程度の取拾選択を行なうことができた。この実証研究の成果は、さらに改良を加えて、昭和62年度中に「公共選択論からみた物品税構造の実証分析(仮題)」として『城西経済学会誌』に発表する予定である。 今後の本研究の展開に関する具体的計画としては、昭和62年度城西大学海外派遣研究員(現在申請中)として昭和62年8月より1年間、1986年ノーベル経済学賞を受賞したBuchanan教授が中核となるThe Center for Studyof Public Choice George Mason University,Fairfax VA,USAに客員研究員として留学し、本研究成果をもって共同研究等を活発に行ない、これを一層発展深化させることを計画している。この留学計画を実際に企画できるようになったこと自体も、本研究の大きな具体的成果のひとつであり、ここに謝意を表する次第である。
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