研究概要 |
昭和60年度の科研費により、スペクトロメータ系の改良は殆ど終了していたが、更に61年度の科研費により光電子増倍管を購入追加し、回路系も一部改良した。カウンター系の夫々及び相互間の同時計数系を調整し、系の特牲を調べ、全系のテスト実験を行なった。総合的には、π中間子の辨別が電子によるバックグランドの【10^(-5)】程度迄可能な事が分り目的を達成した。 今年度の実験のテーマとしては【^(15)N】【(r,π^-)^(15)】Og.s.を取り上げ、先づ【^(15)N】の液体アンモニアターゲット系を製作し、之を散乱槽内に設置して予備実験を行なった。ターゲットの実効的な厚さの変化を入射電子の強度を変えてチェックした所、ターゲットの実効的厚さは入射電子ビーム強度に依存するが、強度を一定に保てば一定である事が分った。従って実験をビーム強度一定で行なった。又ターゲットに含まれるHから生成される【π^+】をも測定し、絶対値の較正に用いた。 【^(13)C】【(γ,π^-)^(13)】Ng.s.反応と同様に【^(15)N】【(γ,π^-)^(15)】Og.s.の核の状態は夫々【(1/2)^-】であり、可能な転移はMI,EOである。計算によると、MI成分はスピン・アイソスピン反転型でその角分布は70°附近で谷を示し、この附近でEO成分が極大となる。従ってEO成分の研究が可能であり、核内の△の寄与等が研究出来ると考えられる。理論の計算結果は大阪大学や日本大学の理論家との数度にわたる討論及び学生アルバイトを派遣しての計算の結果求められたものである。実験結果は理論結果に比較して小さく、谷の位置も異なる。計算に用いた残留状態等の波動関数は電子散乱の実験結果を再現するものであるが、電子散乱と(γ,【π^-】)反応の相互作用ハミルトニアンのわずかな相違が(γ,【π^-】)反応の結果の大きな相違となって現われるものと考えられる。この結果は重要で、更に理論計算によるチェックを進めると共に実験も追加し結果を確認する予定である。
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