研究概要 |
1.低次元時空における量子重力理論の研究 複雑な量子重力のいくつかの側面を単純化された状況においてとらえる目的で, 2次元時空の高階微分型模型やスカラー・テンサー型模型を分析した. この模型のWKB波動汎関数, 共形量子異常等の導出を行った. 特に量子効果によって宇宙定数が微調節なしにゼロになる可能性があることを示した. 2.量子重力理論としての(超)弦理論の研究 相対論的弦の量子論は自然にアインシマタインの重力理論の拡張になっていることは, 本研究代表者らの以前の研究によって明らかになっている. しかしここ数年なされた多くの成果によっても, 超弦理論の幾何学的背景や非攝動論的な定式化に関しては大きな進展もなくまだその端緒さえ見い出されていないという現状にあると思われる. このような認識のもとで以下のような研究を行った. (1)光円錐弦場理論による研究:光円錐弦場の作用原理が時空座標に関する一種の共変性を持つことを示した. また弦場の再定義によって弦の結合定数を連続的に変化させることができることを示した. これは弦理論を特徴づける定数がプランクの長さ唯一つであることを作用原理に基づいて理解できたという点で重要である. (2)背景時空によらない弦場理論の定式化についての準備的な研究:上記(1)の研究成果に基き背景幾何学に独立な仕方で作用原理を定式化する可能性を提案した. この提案は他のグループによってさらに発展させられている. (3)弦理論の紫外構造:弦理論は双対性のために紫外発散を含まないが, このことは弦理論の時空のとらえ方がリーマン幾何学とは根本的に異なっていることを意味している. この事実を時空における新しい不確定性原理によってとらえることを提案した. これらは弦理論の幾何学への手がかりになるものと期待される. 今後もこの観点から弦理論の新しい定式化の道を探って行きたい.
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