研究概要 |
ハイパー原子核の崩壊の研究は、必然的にその生成機構,構造の特徴の研究を伴い、また、未知の相互作用の解明にもつながるものである。 1)強い相互作用による崩壊。 Λハイパー核の高励起一粒子準位の巾が異常に狭い理由を、ΛのアイソスピンO,ΛΝ相互作用のスピン依存性の弱さという事から解明した。【(^9_Λ)Be】 を典型例としてとりあげ、(【K^-】,【π^-】)反応で観測されているピークのエネルギーと崩壊巾とを微視的クラスター模型により説明し、又、予測をした。【(^9_Σ)Be】に対しても類似のアプローチを用い、更に転換巾を生む複素ΣΝ相互作用を用いて計算を行った。しかし結果は実験事実と合わず、Σハイパー核の崩壊は、実験データーの不足もあり、依然として重要な課題である。 2)電磁相互作用による崩壊。 Λ粒子が系の安定化剤となりハイパー核をcompressする"glue-like"効果はE2遷移に最も劇的に現れる。この理論予測を一層確実なものとした。 3)弱い相互作用による崩壊。 ハイパー核は最終的にπ中間子崩壊又は非中間子崩壊によって通常原子核に転換する。π中間子崩壊は、核の構造を敏感に反映する。軌道占有の状況,短距離相関,π波のゆがみや吸収等の効果を研究し、多くの理論予測を行った。又最近のBNLでの実験の解析にもこの結果が貢献した。 非中間子崩壊の機構は未だ明らかでない、π,p交換モデルでは軽いハイパー核でのデーターを説明できなかった。有効な実験法は偏極ハイパー核を生成し、そこから崩壊した核子の角相関(非対称性)を調べることである。この問題の理論的検討を行い、実験プロポーザルの基礎を与えた。 4)成果の集大成は、Prog.Theor.Phys.Supplement No.81及び核研国際シンポジウム(私が委員長)にまとめられた。
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