研究概要 |
くりこみ群およびその解析的方法としてのMigdal-Kadanoff変換に代表されるスケール変換は、臨界現象の取り扱いの一般的概念として重要である。最近の動向であるVirasoro代數・Kac-Moody代數を取り込んだ共形代數・超共形代数の表現論の研究は、局所スケール変換の一般論を展開するものと見なすこともできる。従って当該研究課題とも密接に関わる重要なテーマである。またこの方向の研究は、目下集中的に研究されつつある重力を含む大統一理論としての可能性を含む超弦理論の理論構造の数学的解明の上でも、基本的重要性を示すものである。当該研究では、ゲージ系・スピン系におけるスケール変換を包括する2次元場の理論の共形対称性の研究およびその対称性を実現する共形代数の表現論の研究を推し進めた。特に共形代数のVerma・Module中のNull States構築の一般的処法を与えた。またこの方法を超電荷N(=0,1,2)を持つ超共形代数に拡張し、その表現の数学的解明を行った。この結果、N=0,1,2の各場合のNull Statesの一般的表現を与えると同時に、各場合のKac determinants導出の証明を与えた。これらの成果は超弦理論の数学的構造解明の手掛りを与えるものであり、特に超弦理論における余剰次元のコンパクト化の問題を考察する上で極めて重要不可欠の寄与をなすことが期待される。当該研究の方法論の延長線において高いNの超共形代数の表現論を分析することは将来の課題である。特にN=4の解析は、超弦理論のコンパクト化の集中的研究という最近の動向からして、極めて興味あるテーマである。以上の研究成果は5編の欧文論文にまとめられた。特にその中の一編は当該研究課題の総合報告を意図したものである。当該研究テーマは物理と数学の接点をなすものでもあり、当該研究の逐行にあたって数学者との密度の高い研究討論・情報交換は不可欠かつ極めて有益であったことを付記する。
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